新しいつながりLab

世代・部署を超えた共感を生むストーリーテリング活用術

Tags: コミュニケーション活性化, 世代間ギャップ, 部署間連携, 相互理解, 組織文化, 心理的安全性, 人材育成

組織内の「見えない壁」をなくす:ストーリーテリングの力

多くの企業が、世代間の価値観の違いによるコミュニケーションの難しさや、部署間の連携不足といった課題に直面しています。長年の経験を持つベテラン社員と、デジタルネイティブな若手社員。それぞれの働き方や考え方には違いがあり、それが時として組織内に「見えない壁」を生んでしまいます。また、部署ごとに専門性が高まるほど、他部署の業務内容や抱える課題が見えにくくなり、連携が阻害されるケースも少なくありません。

このような状況下で、組織の一体感を醸成し、新しいアイデアが生まれやすい風土をつくるためには、単なる情報伝達を超えた、より深い相互理解と共感が必要です。そこで注目されているのが、「ストーリーテリング」というアプローチです。

本記事では、組織内のコミュニケーション課題解決に役立つストーリーテリングの可能性と、具体的な場づくりや施策、そして導入・運用におけるポイントについて解説します。読者の皆様が、自社の組織風土に合わせた実践的なヒントを見つけられることを目指します。

なぜ組織でストーリーテリングが重要なのか?

ビジネス文脈におけるストーリーテリングとは、単なる事実やデータだけでなく、個人的な体験談や背景にある感情、学びなどを織り交ぜて語ることです。これにより、聞き手は情報だけでなく、語り手の人間性や価値観に触れ、共感や信頼感を抱きやすくなります。

特に、組織内でストーリーテリングが力を発揮するのは、以下のような理由からです。

具体的なストーリーテリングの場づくり・施策例

組織内でストーリーテリングを実践するための「場」は、様々な形で設定できます。ここではいくつかの具体的な施策例をご紹介します。

1. 社内イベント・集会での「マイストーリー」発表会

全社集会や部署ごとのミーティングなどで、数名の社員が自身のキャリアストーリー、プロジェクトでの成功・失敗体験、仕事への想いなどを語る時間を設けます。

2. 社内報や社内SNSでの「私の履歴書」「〇〇さんの素顔」連載

社員一人ひとりに焦点を当て、これまでのキャリア、趣味、仕事への情熱などをストーリー形式で紹介する連載企画です。

3. メンタリングや1on1における「語る・聴く」時間

メンターとメンティー、あるいは上司と部下の間の定期的な対話において、業務報告だけでなく、お互いの経験や考え方、感情などを「ストーリーとして語る・聴く」時間を意識的に設けます。

4. ワークショップ形式での「経験共有会」

特定のテーマ(例: 「私たちのチームの成功事例」「部署連携で苦労したこと」「新しい取り組みへのチャレンジ」)について、グループ内で各自の経験をストーリーとして共有し合うワークショップを実施します。

5. オンラインツールを活用した「ボイスメッセージ」「ショート動画」投稿

社内チャットツールや動画共有プラットフォームなどで、日々の業務で感じたこと、簡単な感謝、ちょっとした豆知識などを、テキストではなく音声や短い動画で気軽に共有する文化を醸成します。

これらの施策は、単独で実施することも、組み合わせて実施することも可能です。重要なのは、組織の目的や課題に合わせて、どのような「ストーリー」を、誰が、誰に向けて語る場を作るのかを設計することです。

ストーリーテリング導入・運用における勘所

ストーリーテリングを組織に根付かせ、その効果を最大限に引き出すためには、いくつかの重要なポイントがあります。

ストーリーテリングは、高額なシステム導入や大規模な研修が必要なわけではありません。まずは小さなチームや部署内で、カジュアルな対話の時間を設けることからでも始められます。重要なのは、「人の話に耳を傾け、その背景にあるストーリーを知りたい」という意識を組織全体で育むことです。

まとめ:ストーリーテリングで組織の血流を良くする

世代間ギャップや部署間の壁は、組織の成長を鈍化させる要因となり得ます。これらの課題を乗り越え、風通しの良い、一体感のある組織をつくるためには、社員一人ひとりがお互いを理解し、共感し合える関係性の構築が不可欠です。

本記事でご紹介したストーリーテリングは、そのような深い相互理解と共感を生むための有効なアプローチです。個人の経験や想いを共有する場を意識的に設けることで、組織内の「見えない壁」を取り払い、信頼関係を醸成し、新しいアイデアや連携が自然と生まれる土壌を耕すことができます。

ぜひ、この記事でご紹介した施策例や導入のポイントを参考に、貴社に合ったストーリーテリングの「場づくり」を検討してみてはいかがでしょうか。小さな一歩から始めることが、組織の血流を良くし、活性化へとつながるはずです。