新しいつながりLab

部署・世代の枠を超えた視点獲得を促すコミュニケーション場づくり

Tags: 組織開発, コミュニケーション活性化, 多様性, ナレッジマネジメント, 企業文化

組織の硬直化を防ぐ「多様な視点獲得」の重要性

大企業において、組織のサイロ化や部署間の壁、世代間の価値観の違いは、古くから存在する課題です。これらの壁は、情報や知識の流通を滞らせるだけでなく、個々人の視点を固定化させ、結果として新しいアイデアや組織の変化への適応力を阻害する要因となります。

特に人事・組織開発に携わる管理職の皆様は、こうした課題に対して、どのように社員間のコミュニケーションを活性化し、組織全体の視野を広げ、新たな価値創造を促すかについて日々検討されていることと存じます。

「新しいつながりLab」では、世代や背景を超えたコミュニケーションの場づくりを通じて、組織の課題解決に繋がるヒントを提供しています。本稿では、組織内に多様な視点を取り込み、硬直化を防ぎ、イノベーションを育むためのコミュニケーション場づくりについて、具体的なアプローチと事例、導入のポイントを解説します。

なぜ「多様な視点」が組織を活性化するのか

多様な視点が組織にもたらすメリットは多岐にわたります。

しかし、意図的に多様な視点を取り込む機会を作らなければ、社員は日々の業務に追われ、自身の専門分野や所属部署の範囲内で思考が固定化しがちです。だからこそ、「多様な視点獲得」を目的としたコミュニケーションの場づくりが不可欠となるのです。

多様な視点獲得を促すコミュニケーション場づくりの具体的なアプローチ

多様な視点を組織内に取り込むためのコミュニケーション施策には、様々なアプローチがあります。ここでは、ターゲット読者である人事・組織開発担当者の皆様が、自社でも検討しやすい具体的な手法をご紹介します。

アプローチ1:異質な知との接点を作る

自身の専門外や所属部署では得られないような、新しい情報や知識に触れる機会を意図的に設けるアプローチです。

アプローチ2:立場・役割を超えた対話を促す

通常の組織構造や人間関係では生まれにくい、異なる立場や役割を持つ社員同士の対話を意図的に促すアプローチです。

アプローチ3:経験・知見を共有する仕組みづくり

個人的な経験や部署内の知見を組織全体に共有し、他の社員がそれに触れる機会を作るアプローチです。

導入・運用のポイントと費用対効果に関する示唆

多様な視点獲得を目的としたコミュニケーション場づくりを成功させるためには、いくつかのポイントがあります。

  1. 目的と期待する効果の明確化: なぜ多様な視点が必要なのか、この取り組みを通じて組織の何を変えたいのかを明確にし、関係者と共有します。
  2. トップのコミットメント: 経営層や管理職が率先してこうした場に参加したり、重要性を発信したりすることで、社員の参加意欲を高めます。
  3. 推進体制の構築: 誰が責任を持ち、どのように施策を企画・実行・運営していくのかを明確にします。人事部だけでなく、広報部や各部署の協力を得ることも重要です。
  4. 心理的安全性の確保: 異なる意見や立場であっても安心して発言・交流できる雰囲気づくりが最も重要です。失敗談の共有なども含め、ポジティブな姿勢で参加を促します。
  5. 参加へのインセンティブ: 業務時間内の参加を認める、貢献を評価する仕組みを作るなど、社員が参加しやすい環境を整えます。
  6. 効果測定と改善サイクル: 直接的なROI測定は難しいケースが多いですが、参加者アンケート、交流後のアイデア創出数、社内エンゲージメントサーベイの結果などを継続的に測定し、施策の改善に繋げます。低コストで始められる施策(シャッフルランチ、小規模な勉強会など)から試行し、効果を見ながら拡大していくアプローチも現実的です。

大手企業の中には、これらのアプローチを組み合わせ、全社的なコミュニケーション戦略として推進している事例が多く見られます。例えば、定期的な役員と社員のタウンホールミーティング、部門横断プロジェクトへの積極的なアサインメント、知見共有プラットフォームの全社展開などが挙げられます。重要なのは、単発のイベントで終わらせず、組織文化の一部として多様な視点を取り込む取り組みを定着させることです。

まとめ

今日の予測困難なビジネス環境において、組織の適応力とイノベーション創出は不可欠です。そのためには、組織内のコミュニケーションを活性化し、部署や世代の壁を越えて多様な視点を取り込むことが極めて重要となります。

本稿でご紹介したような、異質な知との接点作り、立場・役割を超えた対話促進、経験・知見共有の仕組みづくりといったアプローチは、いずれも多様な視点獲得を促す有効な手段です。

まずは自社の課題や文化に合った施策を選定し、小さく始めることから検討されてみてはいかがでしょうか。これらの取り組みが、組織の硬直化を防ぎ、新しいアイデアが生まれやすい風土を醸成し、社員一人ひとりの成長と組織全体の活性化に繋がることを願っております。

「新しいつながりLab」では、これからも組織のコミュニケーションに関する様々な情報や事例を提供してまいります。ぜひ、今後の記事もご参照ください。