コミュニケーション施策の効果測定に役立つ社内サーベイの勘所
組織コミュニケーション施策、その効果は測れていますか?
組織におけるコミュニケーションの活性化は、多くの企業で重要な経営課題の一つとして認識されています。特に、世代間の価値観の違いや、部署間の連携不足、新しいアイデアが生まれにくいといった課題は、人事・組織開発担当の皆様が日々向き合っていることでしょう。
様々な施策を検討・実行されていることと思いますが、「実際に効果が出ているのだろうか?」「投資対効果はどうなのか?」といった疑問を抱くことも少なくないのではないでしょうか。コミュニケーションという、目に見えにくい領域の課題解決においては、施策の成果を定量的に把握することが難しいと感じる場面が多いかもしれません。
そこで本記事では、社内コミュニケーション施策の効果を「見える化」し、次のアクションにつなげるための有効な手段として、社内サーベイ(従業員意識調査)の活用に焦点を当て、その設計と活用の勘所について解説します。
なぜ社内サーベイがコミュニケーション施策に有効なのか
社内サーベイは、従業員の意識や意見を幅広く収集するための有効なツールです。これをコミュニケーション施策の効果測定に活用することで、以下のようなメリットが得られます。
- 課題の定量的な把握: 漠然とした「コミュニケーション不足」を、具体的な数値や傾向として把握できます。部署別、世代別などで比較分析することで、課題の所在を明確に特定できます。
- 施策効果の測定: 施策実施前後のサーベイ結果を比較することで、施策が従業員の意識や行動にどのような変化をもたらしたかを定量的に評価できます。
- 従業員の声を直接聴く: 匿名での回答を担保することで、普段なかなか表に出てこない従業員の本音や具体的な意見(フリーコメントなど)を収集し、課題の深掘りや新たな示唆を得ることができます。
- 部署間・世代間の意識比較: サーベイ結果を属性(部署、役職、世代など)ごとに集計・分析することで、部署間の壁や世代間ギャップに起因するコミュニケーション課題を浮き彫りにできます。
- 経営層・現場へのフィードバック: 定量的なデータを示すことで、コミュニケーション施策の重要性や効果を経営層に説明しやすくなり、また現場への具体的な改善点のフィードバックにも繋がります。
このように、社内サーベイは、コミュニケーションという定性的な領域の課題を定量的に捉え、施策の効果を測定し、次の具体的なアクションにつなげるための強力な武器となります。
効果的な社内サーベイ設計のポイント
コミュニケーション施策の効果測定に役立つサーベイを実施するためには、事前の設計が非常に重要です。以下のポイントを押さえてください。
1. 目的の明確化
「なぜサーベイを実施するのか?」「このサーベイで何を明らかにしたいのか?」といった目的を明確に定めることが出発点です。例えば、「若手とベテランの間の意見交換頻度を測りたい」「部署間の情報共有の課題を探りたい」「導入した〇〇ツールの利用状況と満足度を測りたい」など、具体的な目的を設定します。この目的によって、後続の設問内容や分析方法が決まります。
2. 設問設計の工夫
目的達成のために、適切で分かりやすい設問を作成します。コミュニケーションに関するサーベイでは、以下のような観点を含めると良いでしょう。
- 頻度: 例:「部署内のメンバーと業務に関する雑談をする頻度」「他部署のメンバーと情報交換する頻度」
- 質: 例:「自分の意見やアイデアを自由に発言できると感じるか」「他部署との連携は円滑に行えていると感じるか」
- ツール/場の利用: 例:「社内SNSをどの程度利用しているか、利用して役立っているか」「最近実施された社内イベントに参加してよかったか」
- 風土/心理的安全性: 例:「失敗を恐れずに新しいことに挑戦できる雰囲気か」「困った時に誰かに助けを求めやすいか」
- 具体的な課題や意見(フリーコメント): 「社内のコミュニケーションについて、改善してほしい点や良い点があれば教えてください。」
世代間や部署間の課題に特化したい場合は、「〇〇世代のメンバーとのコミュニケーションについて」「△△部署との連携について」のように、具体的な対象を絞った設問も効果的です。回答形式は、5段階評価などの定量的なものに加え、具体的な意見を収集するためのフリーコメント欄を必ず設けましょう。
3. 実施頻度と対象者
施策の効果測定のためには、施策実施「前」と「後」での比較が基本となります。四半期ごとや半期ごとなど、定期的に実施することで、継続的な変化を追うことができます。対象者は、全従業員とするのが理想ですが、特定の施策効果を測る場合は、関連部署や特定の層に絞ることも可能です。
4. 匿名性の担保と信頼性
従業員が本音で回答するためには、匿名性が十分に担保されていることを明確に伝え、信頼を得ることが不可欠です。個人が特定されるような集計は行わないこと、サーベイの目的と結果の活用方法を事前に丁寧に説明することが重要です。
サーベイ結果の分析と活用方法
サーベイは「実施すること」自体が目的ではなく、結果を分析し、改善活動につなげることが最も重要です。
1. 多角的な分析
全体の傾向はもちろん、部署別、世代別、役職別など、様々な切り口でデータを集計・比較分析します。ここで、どの属性間でコミュニケーションに課題があるのか、特定の部署だけスコアが低いのか、といった具体的な問題を浮き彫りにします。フリーコメントは、定量データだけでは見えない背景や具体的な状況を理解するための宝庫です。丁寧に読み込み、分類・分析します。
2. 課題の深掘りと施策への反映
分析結果から特定された課題に対し、なぜそのような結果になったのかをさらに深掘りします。必要であれば、対象部署へのヒアリングやワークショップなどを実施し、原因を特定します。そして、その原因に基づいた具体的な改善施策を検討し、実行に移します。例えば、「特定の部署間で情報共有のスコアが低い」という結果が出た場合、合同での情報交換会の実施、共有ツールの導入・利用促進などを検討するといった流れです。
3. 結果のフィードバックと共有
サーベイ結果とそれに基づく改善計画は、関係者(経営層、管理職、従業員全体)に適切にフィードバック・共有することが重要です。特に、サーベイに回答してくれた従業員に対して、結果がどのように活用され、どのような改善に繋がったのかを示すことで、次回のサーベイへの協力意欲を高め、組織に対する信頼感を醸成できます。ポジティブな結果だけでなく、課題点も正直に伝えることで、組織全体のコミュニケーション改善に対する当事者意識を高めることができます。
費用対効果に関する示唆
社内サーベイの実施にかかるコストは、利用するツールや外部委託の有無によって大きく変動します。
- 内製: GoogleフォームやMicrosoft Formsなど、既存のツールを活用すればコストを抑えられます。ただし、設問設計、配布、集計、分析といった一連の作業に社内リソースを割く必要があります。人事部内の工数として費用対効果を検討する必要があります。
- 外部ツール/サービス: 社内サーベイに特化したツールや、コンサルティングサービスを利用する方法です。専門的な知見に基づいた設問設計のサポート、詳細な分析機能、ベンチマークデータとの比較などが可能になる場合が多く、より深い洞察や効率的な運用が期待できます。コストはかかりますが、得られる情報の質や分析の効率性を考慮すると、費用対効果が高い場合もあります。
自社の目的、かけられるリソース、得たい情報の深度などを考慮し、最適な方法を選択することが重要です。まずは既存ツールでスモールスタートし、必要に応じて専門サービスを検討するのも良いでしょう。
まとめ:サーベイ活用でコミュニケーション課題を可視化し、成果に繋げる
社内コミュニケーション施策は、その効果が見えにくいために、投資判断や改善活動が難しくなりがちです。社内サーベイを戦略的に活用することで、この「見えにくさ」を解消し、コミュニケーションに関する組織の現状を定量的に把握し、実施した施策の効果を測定し、次の具体的な改善アクションに繋げることが可能になります。
世代や部署を超えた「新しいつながり」を組織内に育むためには、現状の課題を正しく理解し、効果的な打ち手を継続的に講じることが不可欠です。ぜひ、社内サーベイを組織コミュニケーション改善のための羅針盤として活用し、より風通しの良い、活力ある組織づくりにお役立てください。サーベイで得られた客観的なデータは、皆様が推進する組織開発施策の強力な後押しとなるはずです。