新しいつながりLab

全社横断プロジェクトチーム組成・運用ポイント:世代・部署の壁を超える連携

Tags: コミュニケーション活性化, 部署間連携, 世代間コミュニケーション, 組織開発, プロジェクトチーム

全社横断プロジェクトチーム組成・運用ポイント:世代・部署の壁を超える連携

組織内で部署間の連携が不足している、世代間の価値観のギャップからコミュニケーションが滞りがちである、あるいは新しいアイデアが生まれにくい風土に課題を感じている人事・組織開発担当者は少なくありません。こうした課題に対し、多様な人材が共通の目的に向かって協働する「場」を意図的に創出することは、非常に有効なアプローチとなります。

本記事では、特定のテーマや課題解決のために一時的に組成される「全社横断プロジェクトチーム」に焦点を当て、これがどのように世代や部署の壁を越えた連携を促進し、組織の活性化や新たな価値創造に貢献するのか、その組成・運用のポイントと事例について解説します。

全社横断プロジェクトチームとは

全社横断プロジェクトチームとは、特定の目的達成や課題解決のため、異なる部署、異なる役職、異なる世代の社員から一時的に選抜され、組成されるチームを指します。通常の縦割り組織の業務遂行とは異なり、特定のミッションに対して多様な視点とスキルを結集させることを主眼としています。

その目的は多岐にわたります。例えば、新しい事業やサービス企画、社内制度の改訂、特定の経営課題(例:サステナビリティ推進、DX戦略実行)に対する提言、あるいは社内イベントの企画・実行などです。これらの活動を通じて、普段は接点のない社員同士が密に連携し、コミュニケーションを図る機会が自然と生まれます。

世代・部署間の連携を促すメカニズム

なぜ、全社横断プロジェクトチームが世代や部署の壁を超える連携に有効なのでしょうか。主なメカニズムは以下の通りです。

全社横断プロジェクトチームの組成・運用のポイント

全社横断プロジェクトチームを効果的に活用するためには、いくつかの重要なポイントがあります。

1. 目的とテーマ設定の明確化

最も重要なのは、プロジェクトの目的とテーマを具体的に、かつ魅力的に設定することです。何のためにチームを組成するのか、どのような成果を目指すのかを明確にすることで、メンバーのモチベーションを高め、活動の方向性が定まります。全社的に解決すべき課題や、社員の関心が高いテーマを選ぶことが成功の鍵となります。

2. 多様なメンバー選定

異なる部署、世代、役職、そして異なるスキルや経験を持つメンバーを選定することが、多様な視点を取り入れ、創造性を高める上で不可欠です。自社の課題を踏まえ、意図的にこれまで交流が少なかった人材を組み込むことも有効です。メンバーの選定にあたっては、本人の関心や意欲も考慮すると、主体的な参画を促せます。

3. 推進体制と経営層のサポート

プロジェクトを円滑に進めるためには、人事部が中心となって組成・運用をサポートする体制や、必要に応じて経営層からの承認・サポートを取り付けることが重要です。特に、メンバーが本業と兼務する場合、業務時間の確保や評価への反映といった点で、上司や関係部署の理解と協力が不可欠となります。

4. コミュニケーション環境の整備

プロジェクト専用のチャットグループ、共有ドライブ、オンライン会議システムなど、メンバーが物理的に離れていても円滑にコミュニケーションを図れる環境を整備します。定期的な進捗報告会や、カジュアルな情報交換の機会を設けることも効果的です。

5. 活動期間・ゴールの設定と柔軟な運用

活動期間や最終的なゴール(成果物や提言など)を事前に設定し、進捗に応じて柔軟に見直すことが、チームを機能させる上で役立ちます。短期集中型のプロジェクトは、メンバーの負担を抑えつつ、迅速な成果に繋がりやすいでしょう。

6. 成果発表とフィードバック

プロジェクトの成果は、全社に対して発表する機会を設けることが重要です。これにより、チームの貢献が認められ、メンバーの達成感に繋がります。また、活動を通じて得られた知見や、チーム内のコミュニケーションでうまくいった点・改善点などを振り返り、次のプロジェクトに活かすフィードバックの機会も設けると良いでしょう。

導入事例(類型)

大手製造業A社では、社内のデジタル活用を推進するため、情報システム部門、製造現場、営業部門、研究開発部門など、多様な部署から若手・中堅社員を中心とした全社横断プロジェクトチームを組成しました。チームは「現場のデジタル化で業務効率を向上させるアイデア」をテーマに活動。定期的なオンライン会議に加え、実際の製造現場見学やワークショップを実施しました。結果として、部署間の業務プロセスの理解が深まり、複数部署を横断する画期的な業務改善アイデアが生まれました。また、チーム活動を通じて育まれた信頼関係は、プロジェクト終了後も部署間の連携強化に繋がっています。初期投資は主に活動に関わる時間と、オンラインツールの利用料程度で、大きな費用をかけずに部署間の壁を低くする効果を得られました。

成長IT企業B社では、新しい福利厚生制度の企画のため、入社3年以内の若手からベテラン社員、本社部門から地方拠点メンバーまでをアトランダムに選出し、ワーキンググループを立ち上げました。彼らは「全社員が働きがいを感じる制度」をテーマに、社員アンケートや他社事例研究を実施。活発な意見交換を通じて、最終的に柔軟な働き方を支援する新しい制度を提言しました。この過程で、世代間の価値観の違いや、本社と地方拠点の状況に関する理解が深まり、互いの立場を尊重する姿勢が育まれました。

導入検討にあたって

全社横断プロジェクトチームの導入は、組織のコミュニケーションを活性化し、新しいアイデアや連携を生み出す有効な手段となり得ます。特に、特定の喫緊の課題がある場合や、組織文化を変革したいという強い意思がある場合に効果を発揮しやすいでしょう。

費用対効果を考える上では、外部コンサルタントへの依頼が不要な場合が多く、主に社員の時間投入が主なコストとなります。目的設定やメンバー選定を適切に行えば、コストを抑えつつ大きな成果(課題解決、アイデア創出、社員エンゲージメント向上、組織風土改善など)が期待できます。まずは比較的小規模なテーマや期間でスモールスタートし、試行錯誤しながら運用方法を確立していくことも一つの方法です。

まとめ

全社横断プロジェクトチームは、異なる部署や世代の社員が一つの目標に向かって協働する「場」を提供することで、組織内の硬直化を打破し、活発なコミュニケーションと新しい価値創造を促進する強力なツールとなり得ます。

本記事でご紹介した組成・運用のポイントを参考に、ぜひ貴社における組織課題解決とコミュニケーション活性化の一つの施策として、全社横断プロジェクトチームの導入をご検討いただければ幸いです。多様な才能と視点が結集することで、組織には思いがけない変化と成長がもたらされることでしょう。